2022年ドラフト指名振り返り【福岡ソフトバンクホークス】

2022年10月20日プロ野球ドラフト会議が開催された。

 

今回はホークスが指名した支配下選手6人について調べた経歴や特徴をまとめて、指名全体を総括する。

 

 

 

 

指名選手

 

1位 イヒネイツア(誉高)

184cm82kg、右投げ左打ちの遊撃手。高校通算18本塁打

3年夏に2試合7打数で5安打、2二塁打、1三塁打、1本塁打、2四球、打率.714、出塁率.778、長打率1.714。

通算では8試合23打数で13安打、7四球、1三振、打率.565。

 

打撃の特徴として、木製バットを一度も折っていないというエピソードもあるように、長打力がありながらバットコントロールに優れていて、実際に公式戦の通算でもサンプルが少ないながら三振は1つだけだった。

足と肩も良いらしいがプロでも際立つものかは不明。

 

事前予想では2位前半が中心だった中での1位指名だったため、2020年ドラフト1位の井上と同じ形で2位前半評価だが2位後半では残っていないと踏んでの繰り上げ指名、もしくはいつものホークス独自評価だと最初は思っていた。

2位前半評価だった理由として、高校3年になってから評価が急上昇したため実績が少ないこと、日本では少ない高身長ショートなうえ高校2年からショートに転向したためプロでも守れるか不安なこと、この2点が挙げられる。素材型すぎるため1位で行くにはリスクが高くて怖いという評価だった。

しかしドラフト後にホークススカウトのコメントで「スカウト陣でイヒネ選手を評価する声が一番多かった」と明かし、繰り上げ指名ではなかったこと。さらに巨人スカウト部長が「高校生NO.1は浅野、次にイヒネ」、「外れは金村、外れ外れだったらイヒネ」とコメントしたこともあり、少なくとも巨人からも評価されていたのには安心できた。

 

 

2位 大津亮介(日本製鉄鹿島)

最速152kmの大卒社会人右腕。大学から投手に転向。

 

ドラフトで名前が呼ばれた時は、2位という順位で知らない選手が指名されて呆然としてしまった。

事前予想では下位予想こそあったものの上位予想は皆無で、高値掴みな印象。

 

低かった事前予想の理由は高くないスペックと実績の少なさ。

177cmと比較的小柄なうえ細身であること。

2022年の公式戦での成績も被安打率10.04、奪三振率6.09、四死球率2.63と優れた指標も残せていない。

総じて技巧派の大卒社会人でありながら素材型という評価。

 

特徴としてスカウトは制球力を評価。本人はスライダーとワンシームを自信としている。

 

最大のポイントは大津>残っていた野手という選択と、同じ社会人投手の中で大津>吉野・益田という評価の是非。

野手では1~2位評価だった内藤・西村・澤井などが残っていた中で大卒社会人投手を指名したからには早い時期からの活躍が求められる。

そして同じ社会人投手の中では吉野と益田の方が遥かに評価されていたため、2人より活躍できるかどうかでもこの指名の是非が問われる。

 

 

3位 甲斐生海(東北福祉大

184cm95kg、右投げ左打ちの一塁手・外野手。4年時は一塁での出場が中心だったが外野手として指名された。

 

九州国際大付属高校時代は主軸として高校通算33発。

東北福祉大では2・3年の時に野球から離れるも4年春から試合に出始めていきなりOPS.899と活躍、秋は更に無双しOPS1.234、本塁打・打点の二冠に輝いた。

通算27試合86打数、打率.302、6本塁打、9四球、出塁率368、長打率.628、OPS.996、三振率11.6%。

 

福山アマスカウトチーフからは「複数の関係者から『飛距離は東北福祉大で歴代ナンバーワン』との評価を聞いている」、大学入学直後に和田一浩氏からは「(東北福祉大に在籍した)今までの選手の中で一番の素材」と言葉をかけられた。

 

事前予想ではドラフト候補として名前すら上がっていなく、ドラフト当日は2位大津に続いて知らない名前が呼ばれて茫然自失となった。

ただ振り返ってみると甲斐生海より後ろで指名された選手で羨ましいと思ったのは広島3位益田と日本ハム4位安西の投手2人だけだったこと、映像や成績を見てみても出場試合こそ少ないもののポジれる要素しかなかったため結果的には満足している。(2位西村3位大津だった世界線の方が嬉しかったかもしれないとは思うが)

 

同じ東北福祉大の外野手で甲斐より評価が高かった杉澤も残っていたが、甲斐を優先した理由としては両翼のスラッガー>俊足巧打のセンターという優先順位だったことが推測できる。2021年ドラフト2位正木に続き2年連続で大学生外野手スラッガーの上位指名となったことからも、ポスト柳田となる外野の中心打者を確保したいというドラフト戦略だろう。

 

事前評価からは高値掴みになった理由としては、同じ左打ちの大学生外野手スラッガーであるヤクルト3位澤井が先に指名されたから、その次の評価だった甲斐を繰り上げたということなのかもしれない。高校生外野手の古川や西村が残っていたら指名するつもりだったということも考えられる。

 

 

4位 大野稼頭央(大島高)

最速146km左腕。175cmと小柄ながら三振を奪える本格派。

2022年夏の県大会は6試合49回を投げて防御率1.65、被安打率6.80、奪三振率11.76、四死球率3.31。

 

事前予想では4位よりの3~4位だった記憶。

ドラフト当日は2位3位でメンタル崩壊していたところで知ってる名前が呼ばれて一安心できた。

 

2021年ドラフト3位木村に続き2年連続の高校生左腕指名となった。

 

永井スカウト部長はドラフト後に「同等の評価なら、確実に『九州』を意識しています。大野稼頭央君は高校生左腕ではトップランクで、九州ナンバーワン(の素材)の評価でした。門別・森下・森山もいましたが、『大野君を優先して』と話していました」と語った。

 

 

5位 松本晴(亜細亜大)

最速145kmの素材型左腕。

鹿児島の樟南高校では主将でエース。3年夏の県大会では4試合31.1回で奪三振率16.37を記録。

亜細亜大学では3年春にトミー・ジョン手術を受け、4年春に復帰も球数制限が設けられ、リリーフ中心だった。

大学通算22試合38.1回で防御率4.93、被安打率7.98、奪三振率5.40、四死球率4.46。

 

亜細亜大学監督は「素材は高橋遥人以上」と評する。

本人曰く「コントロールとキレに自信がある」。

 

この選手もドラフト前に名前を聞いたことはなかった。

 

2020年5位で投手経験がほとんど無い田上、2021年5位で実績が無く前年に右肘の手術をしている大竹に続き、3年連続で5位での素材型投手指名が続いている。

 

 

6位 吉田賢吾(桐蔭横浜大

180cm88kg右投げ右打ち、指標最強の打てる捕手。

横浜商大高校では1年秋からベンチ入り。2年生から主軸を打ち2年秋から主将と4番を務めた。

桐蔭横浜大学では2年の秋から一塁手のレギュラーになると、3年から正捕手に。4年から主将も務め、4年春には三冠を達成。

大学通算53試合で打率.393、14本塁打、9三振、出塁率.471、長打率.692。

 

ドラフト当日は名前が呼ばれて大歓喜した。

ドラフト前はその傑出した打撃成績と指標がネットで注目され2~3位の上位予想もあった一方で、スカウトコメントがホークスの1回しか出ていなかったことをはじめ注目度が低かったため3~5位予想が中心だったが、個人的にはホークスが2~3位で指名してくれても嬉しいと思っていた。

ホークスの福山アマスカウトチーフは「まさか、まさか(6位)にいるとは、という選手」とコメントしている。

 

最大の特徴が、大学通算打率.393・三振率5%以下を記録したバットコントロール。それでいて通算14本塁打、最多本塁打を2度獲得した長打力も併せ持つ。ホークスの福山アマスカウトチーフは「打球効率、スイングスピード、打球速度はいずれも大学生で全国トップレベル」と評している。

三振は少ないが四球も多くないところから、仕掛けが早く選球眼に若干の不安もある。内川のようなタイプか。

同じ大学出身の2020年ドラフト1位西武渡部と比べると、実績は圧倒的に吉田が上回っているが4年の成績では圧倒的に渡部に軍配が上がっている。

 

懸念としてドラフト前に指摘されていたのが捕手能力の不安、特に送球の安定感と所属するリーグレベルが高くないこと。

打てる捕手として期待も、守備に不安なタイプとしては渡邉陸と被るため、どちらかをコンバートすることも視野に入れた指名か。

 

ちなみにホークスが6位まで指名したのは2018年ドラフト以来となった。

 

 

育成

永井スカウト部長が「今年の育成は投手を中心に指名しました」と語ったとおり8/14が投手となった。そのうち高校生が4人、大学生が4人。

 

注目は1位赤羽と3位木村光。

 

 

まとめ

 

補強ポイント

 

ドラフト前に書いた記事

【2022年ドラフト】現状の戦力と希望する指名【福岡ソフトバンクホークス】 - shiroのブログ

 

 

補強ポイントだと考えていたのが大学生社会人の先発投手、高校生投手、高校生外野手(特にセンター)。次点で高校生遊撃手、大学生捕手。大社投手は最低2人は指名してほしいと思っていた。

 

1位で高校生遊撃手はベストではないが納得はできる選択。その場合に2位で社会人先発投手の確保は希望通り。3位で大学生外野手は希望していた指名ではなかったが、下位で高校生投手・大学生投手・吉田の指名は希望通り。

 

総じて、ジャンルで言うと希望通りの指名になって満足。

 

 

投手と野手のバランス

2022年は投手3人:野手3人のバランスドラフト。

 

その中でも上位3人中2人が野手と、2019年から始まった野手ドラフトの傾向は2022年まで続いている。

 

 

高校生大学生社会人のバランス

2022年は高校生が2人で大学生社会人が4人と即戦力ドラフト寄りだった。

 

2018年即戦力、2019年即戦力、2020年高校生、2021年バランスと、ここ5年は即戦力ドラフトの傾向が強くなっている。

 

 

指名ジャンル

2022年の指名をジャンルごとに分けると、高校生投手1人、高校生野手1人、大学生投手1人、大学生野手2人、社会人投手1人という内訳。

 

近年指名が多くなっているのが大社の即戦力野手。

2012年ドラフト3位髙田以降の6年間は大学生社会人野手の指名が無かったが、2019年3人、2021年2人、2022年2人とここ4年で7人を指名している。

 

その代わりに減っているのが大社投手の指名。
2018年こそ5人も指名したが2019年は3位津森だけ、2020年0人、2021年は5位大竹だけ。2019年から2021年までの3年間で即戦力と言える投手の指名は津森1人だけだった。

若手投手が伸び悩んでいることもあり2022年ドラフトでは最低2人は指名してほしいと思っていたところでその2人だけだったため、2023年も大社投手の指名が必要になる。

 

 

2022年指名選手の投手と野手それぞれの特徴

2022年ドラフトで指名した投手と野手はそれぞれで選手のタイプがはっきりした結果となった。

 

投手の大津・大野・松本晴は3人とも身長や球速等スケールを重視していない、ホークスが好む典型的なパワーピッチャーではなかった。特に大津は上位指名の右腕でありながらパワーピッチャーではないのはかなり珍しい選択。

 

野手ではイヒネ・甲斐生海・吉田3人ともがスラッガー。特にイヒネと吉田はセンターラインのポジションでありながら守備に懸念のある打撃型の選手だった。

 

ここ3回のドラフトを見ても野手はスラッガー指名が中心になっている。

野手ドラフトが始まった2019年ドラフトこそ1位佐藤と2位海野が守備型で5位柳町が巧打者タイプだったが、2020年ドラフトでは1位井上と2位笹川がスラッガー、2021年ドラフトの2人と2022年ドラフトの3人に至っては全員がスラッガーだった(野村勇は守備型かと思っていたが)。

 

 

ドラフト後の永井スカウト部長のインタビュー

 

素材ドラフト

永井スカウト部長はドラフト後に「イヒネ君(の1位指名)は9月の終わりに決めました。即戦力が必要という考えもある中、無理するよりも素材を重視した方がいい年だった」とコメント。

イヒネ以外でも実績があるのは4位大野と6位吉田だけで、全体的にも素材ドラフトとなった。

 

 

基本方針

ドラフト後の永井スカウト部長のコメント、「(主力野手の高齢化が進む)チーム事情の中で、高校生の野手を素材優先でいくという基本方針がありました」には複雑な気持ち。高校生ショートと高校生センターの獲得は理解できるものの、それ以上に大社投手の獲得が求められていた。

 

「いくら評価が高いからといって、1位も2位も3位も野手となったら、それはそれでどうなんだろうと…。イヒネ君を確実に取れたら、(2位は)投手を優先すべきかなと。そのシナリオも大事だろうと、選択肢として用意していました」という方針には賛成。

 

 

即戦力は重視しない

「近年、本当の意味での『即戦力』が少なくなった印象です。補強にはFA、外国人、トレードなどの手法もある。『即戦力』はそちらで補強するという考え方がシンプル。ドラフトで獲得した選手はまず育成をしっかりして、1軍の戦力になってもらう。チーム全体の戦力を上げるには、その方が迷わないのかなと考えています。『1位』に関しては、その年に最も評価が高かった選手を指名するという方針が、強いチームをつくる上で大事ではないでしょうか」

 

 

地元

支配下6人のうち4人が九州ゆかりの選手と、地元を意識したドラフトとなった。

永井スカウト部長はドラフト後、「同等の評価なら、確実に『九州』を意識しています」、「門別・森下・森山もいましたが、『大野君を優先して』と話していました」とコメントしている。